4.言語の構造

【日本語教師養成講座】4.言語の構造|3.言語学:③理論言語学(プロトタイプ/メタファー/メトニミー/シネクドキー/文章理解方略/忌み言葉/キーワード法)

4.言語の構造|3.言語学:③理論言語学

言語の構造「プロトタイプ」「メタファー」「メトニミー」「シネクドキー」「文章理解方略」「忌み言葉」「キーワード法」などについてのまとめです。

構造主義言語学

プロトタイプ

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語に持つ意味の原型的・典型的なものをプロトタイプという。

認知言語学と比喩

メタファー

メタファー(隠喩・いんゆ):類似性の連想に基づき「よくわからないもの」を「よくわかるもの」で表す。

「ねずみ」は分かる→似ているから「マウス」。他に、クラウド・パンの耳など。

メタファーを使った比喩表現

・天気が晴れる→気分が晴れる(明るさ)
・天気が曇る→表情が曇る(暗さ)
・水が凍る→パソコンが凍る(動かない)
・契約書を破る→約束を破る。
・追い風だ→会社の業績を飛ばす。

「心」に関するメタファー表現

・「心がはずむ」→喜びや期待で、うきうきする。
・「心が踊る」→喜びや期待で、わくわくする。
・「心が折れる」→支えを失い、意欲がなくなる。
・「心が沈む」→暗い気持ちになって落ち込む。
・「心が乱れる」→思い悩み、平静でなくなる。

メトニミー

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メトニミー(換喩・かんゆ:metonymy):目立つものを使って、隣接関係にあるものを表す。

「何が食べたい?」「鍋が食べたい」→鍋そのものを食べるわけではない(鍋の中身を食べる)。

いろいろなメトニミー

容器(中身):鍋(の具材)を食べる・やかん(の中の水)が沸いた。ジョッキを飲み干す。
全体(部分):洗濯機(の中の洗濯槽)が回っている・扇風機(の羽根)が止まった。
作者(作品):ショパン(の作った曲)を聴く・漱石(の書いた小説)を読む。
場所(人):首相官邸(にいる政治家)が声明を出した。

シネクドキー

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シネクドキー(提喩・ていゆ:synecdoche):包摂関係に基づき、上位で下位、下位で上位の概念を表す。

「いよいよ春だね」「お花見でも行こうか?」→桜を見に行く。
上位概念「花見」「花吹雪」、下位概念「桜」。
上位概念「飲み物」、下位概念「コーヒー」。
上位概念「親子」、下位概念「鶏肉と卵」→親子丼。実際の親子ではないからメタファーでもある。

特定の語が一般化した意味で使用される例

「瀬戸物」:愛知県瀬戸市が陶磁器の産地であることから。

文章理解方略

文章を正確の読むための読解方略を3つに分けた。

  • 理解補償方略:分からなかったところに戻って読み直す。
  • 内容理解方略:段落ごとに中心文と支持文を抜き出す。
  • 理解深化方略:文章中の出来事を図や表で理解する。

文章に出てきた専門用語の誤訳を調べるのは、文章理解ではなく単語理解。

忌み言葉

いみことば。特定の場面で用いるのに相応しくなく、縁起が悪いために使用を避けられる言葉。
結婚式で「最後になりますが」だと縁起が悪いので「結びになりますが」と言う。
結婚式で「切れる・別れる・終わる」はNG。

キーワード法

学習者の語彙知識を増やす効果的な方法。
覚えたい語彙に音声的に類似した言葉のイメージを関連付けて覚える。

「道具」を覚える時「dog」をイメージする。→「道具を使う犬(A dog using a tool)」で音声と意味を結びつける。

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