9.日本語教育文法

【日本語教師養成講座】9.日本語教育文法|②(格助詞/取り立て助詞/並列助詞・並立助詞/終助詞/複合格助詞・複合助詞)

9.日本語教育文法|②

日本語教育文法「格助詞」「取り立て助詞」「並列助詞(並立助詞)」「終助詞」「複合格助詞(複合助詞)」などについてのまとめです。

助詞

格助詞

ガ格

48

主体・対象の2つがある。

  • 主体:「薬が苦い」「学生が勉強する」「犬が泳ぐ」。
  • 対象:「水が欲しい」「寿司が食べたい」「ゲームが好きです」→目的語にあたる。 

ヲ格

48

起点(出発点)・通過点(経路)・対象の3つがある。

  • 起点(出発点):「家を出る」「日本を離れる」。場所がくる。
  • 通過点(経路):「角を曲がる」「山をのぼる」。場所の移動。
  • 対象:「文法を勉強する」。

ニ格

48

場所・時・到達点・相手・目的の5つがある。

  • 場所:「娘は沖縄に住んでいる」娘が住んでいる場所。
  • :「夜9時にバイトが終わる」バイトが終わる時間。「週末レストランを予約する」は予約する動作が週末ではない。
  • 到達点:「屋根にあがる」屋根が到達点。
  • 相手:「孫にお年玉をあげる」。動作の向きは「〜にしてもらう(〇〇さん→私)」と「〜にする(私→〇〇さん)」がある。
  • 目的:「父はパチンコに出かけた」。出かける目的。

デ格

48

場所・手段/方法・原因/理由・主体の4つがある。

  • 場所:「公園で遊ぶ」遊んでいる場所。
  • 手段方法:「メールで送る」。送る手段。
  • 原因理由:「はしかで休む」。休む理由。
  • 主体:「みんなで歌う」。歌う主体。

ト格

49
  • 共同作業の相手:「ジョンとポールがテレビを見た」→一緒にする動作。ANDに相当する。
  • 相互動作の相手:「ジョンとポールがけんかした」→当然必要になる相手。

ヨリ格

49
  • 比較:単純に2つを比較「太郎は花子より」。「太郎は花子におとらず」の文型は比較だけでなく「太郎も花子も〜である」ことを意味する。
  • 起点:「未明より雪が降り始めた」
2つの比較

比較の文型の述語には、イ形容詞・ナ形容詞・副詞による修飾を受けた動詞・程度副詞によって修飾可能な名詞がある。
「太郎は花子よりちょっと大人」。

以下のものは、比較の文型の述語の位置には使われない。
・場所を示す指示的名詞「ここ・そこ・そのへん・そこいら」:「市役所は駅よりここだ」→言えない。
・形容詞から転成した派生名詞「恥ずかしい→恥ずかしがり」:「この箱はあの箱に劣らず大きさだ」→言えない。
・具体的な数量を示す名詞「3歳」:「この石はあの石に劣らず2kgだ」→言えない。

比較の差は、程度副詞数量詞を使って表す。

  • 程度副詞:
    「もっと」は2つの比較でも使う:「太郎は花子よりもっと頭がいい」は言う。
    「かなり」否定文より肯定文で多く使う:「太郎は花子よりかなり頭がいい」は言う。「かなり頭がよくない」は言わない。
    「少し」が形容詞を修飾すると絶対的な程度ではなく相対的な程度:「太郎は花子より少し背が高い」。
  • 数量詞:
    連用用法「彼には子どもが3人いる」、連体用法「彼には3人の子供がいる」どちらも使う。
3つ以上の比較

「太郎はPの中で最も〜」「Pの中で太郎ほど〜はいない」は、文中に2つの事物を挙げて言い換えることができる。→「他のどんなものにもまして健康は大切だ」健康と他のどんなものを比較している。

程度が甚だしいことを示す文型

3つ以上の比較の延長線上にある。例「うれしいことこの上ない」「静かなことこの上ない」。「この上ない」は形容詞の連体形「〜い+名詞(こと)」で使い、「うれしい極まりない」のように直接はつかない。

・「汗顔の至り」:恥ずかしいこと。極限状態を表す。
・「極まりない」:望まない状態だけではない。「彼女への感謝は極まりない」も言う。
・「極みだ」:「光栄の極みだ」のように「名詞+の」に接続する。

ノ格

9つの格助詞には入ってないけど「の」も格助詞。

ガ・ノ交換」できるかどうか。
・あなた決心
・バッグの値段
・本好きな子ども:「ガ・ノ交換」できる。

取り立て助詞

40

55

主題と対比の2つがある。「係助詞」ということもある。

  • 主題:「田中さんはアメリカ人と結婚した」田中さんについて言っている。
  • 対比:「日本夏だが、ブラジル冬だ」日本とブラジルが主題だが、対比している。主題と対比がある文は1つで表す。

「私(主題)水泳(対比)できない」
格助詞「が」には、主題・対比の用法はない。

文中にない情報を暗示して意味を追加する。

  • 追加・列挙:「も」。「バナナも食べる」→他のものも食べる。
  • 意外性:「も」「さえ」「まで」。「子どもが5人もできた」「子どもさえ知っている」「子どもまで駆り出される」。

「夏好き」:並列の意味を持つ。
「頭冷やした」:述語が同じ。頭と首を引き立てている。
「頭冷やしたし、首冷やした」:命題を引き立てている。
「来て来なくて」:この「も」は接続助詞。取り立て助詞じゃない。

並列助詞(並立助詞)

40

・「と」:「牛乳と卵」。
・「や」:「牛乳や卵」。
・「か」:「行くか行かないか」。

接続助詞

41

節と節をつなげる。→順接条件節と逆接条件節

・順接「なら」:「(従属節)君が行くなら、(主節)僕も行く」
・逆説「が」:「(従属節)兄は行く、(主節)僕はいかない」
・原因「ので」:「(従属節)風邪を引いたので、(主節)会社を休む」
・並立「し」:「頭もいい、足も早い」

終助詞

・疑問「か・かしら」「かな」。
・伝達「よ・ぞ・ぜ・さ・わ」。
・確認・詠嘆「ね・な・なあ・よね」。

「あのさ」「あの人はね」など文中で使われることもある。
「おもしろかった」:共有。相手も情報を知っている。
「おもしろかった」:伝達。相手は情報を知らない。

「わたしも行く」→終助詞
「わたし行く」→取り立て助詞

複合格助詞(複合助詞)

42

「ところで/ところに」

・「彼が来たところで状況は変わらない」→「来ても」に置き換え。
・「質問したいと思っているところに先生がきた」→「時」に置き換え。

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