日本語教師養成講座の単元テスト用として自己学習のために作った穴埋めノートです。
空欄を選択すると答えが表示されます。印刷時は答えを表示しています(倍率70%が◎)。
語用論的規範「言語知識」「JF日本語教育スタンダード」「JFスタンダードの木」「コミュニケーション能力」「ハイムズ」「カナルとスウェイン」「コミュニケーション・ストラテジー」「言語処理ストラテジー」などについてのまとめです。
言語知識
以下の5つがある。問題がある学習者の発話の例。
- 音韻論:発音「きょのしゅうぐだいをわすれましだ」
- 形態論:活用「音楽を聴きますながら、宿題をしっています」
- 統語論:語順「簡単な作り方から母を教えてもらいました」
- 意味論:語の選択「日本の食文化に趣味があります」
- 語用論:配慮「私が作った料理は美味しいから、食べてみたいですか?」
意味論と語用論の違い
「消しゴム持ってる?」の質問に対し、
意味論:「持ってる」ただそれだけ
語用論:「ごめん、1つしかないんだ」
「いいえ」でそのまま答えると語用論的におかしくなる。
JF日本語教育スタンダード
国際交流基金がJF日本語教育スタンダードを作成。日本語の教え方マニュアルみたいなもの。→世界中の日本語教師が同じ基準で情報交換できる。CEFRの評価基準を採用。
ハイムズのコミュニケーション能力を基にしている。
日本語のコースデザイン・授業設計・評価を考えるための枠組み。
A1・A2・B1・B2・C1・C2の6レベル。A1・A2(初級)、B1・B2(中級)、C1・C2(上級)。
課題遂行能力と異文化理解能力の育成を目的とし「JFスタンダードの木」として図式化。
評価基準「Can-do statements」によって熟達度を評価。
母語話者のコミュニケーションスタイルをモデルにしたものではない。
自己評価の「Can-do自己評価リスト」とは別もの。
公式サイト:JF日本語教育スタンダード
さらに細分化したもの・活動例:みんなのCan-doサイト
JFスタンダードの木
- 入力(受容・インプット):クラッシェンのインプット仮説
- 交渉(やりとり・インターアクション):ロングのインターアクション仮設
- 出力(産出・アウトプット):スウェインのアウトプット仮設
コミュニケーション能力(伝達能力)
communication=伝達。
ハイムズ
ハイムズ(アメリカ人):1972年、コミュニケーション能力(伝達能力)という言葉を発表。コミュニケーションは言語能力だけでなく適切な言語使用が必要と主張。空気を読む能力。
正しい文を組み立てるだけではだめ:「部長も私が入れたコーヒーを飲みたいですか」→間違いではないが「部長、コーヒーが入りました、いかがですか」がいい。
カナルとスウェイン
カナルとスウェイン:4つのコミュニケーション能力(伝達能力)。ハイムズの弟子。
スウェインはアウトプット仮設の人と同じ人。
- 文法能力:正しい文を作る能力。文法・語彙・音声・表記などの言語を形作る要素。発音音声・文字表記まで含むのがポイント。
- 社会言語能力:相手や場面、社会的な背景に応じて適切な表現ができる能力。会話の相手に合った表現。社会言語学的能力。相手との距離・敬語が使えるか。
カナダのイマージョン教育においても、文化や場面に適切な言語・非言語表現を選んでコミュニケーションできる能力。
「先生はすごいですね」→目上の人を直接褒めるのは失礼。自分が勉強になったという。
「先生、レポートを聞きたいですか」→「発表させていただけますか」という謙譲表現が適切。 - ストラテジー能力:言葉が思いつかない時に修復できる能力。
コミュニケーション・ブレイクダウン:コミュニケーションが上手く行かない状態のこと - 談話能力:相づちやそのタイミング、会話の切り出し「あのー」などのフィラーや順番(ターン)の取り方など。話を続けて終わらせる能力。
結束性のある発話。
「いい天気ですね。論文を貸していただけませんか」→結束性がない会話。
JF日本語教育スタンダードでは、ストラテジー能力と談話能力を1つにして語用能力としている。
ヤコブソン
ヤコブソン:コミュニケーションには6つの機能があると提唱。
「情動的機能・詩的機能・能動的機能・交話的機能・指示的機能・メタ言語的機能」
詩的機能
言語の具体的な内容よりも、言語そのものを使って遊べる機能。俳句、リズム、音の響き、しり取り、しゃれ、早口言葉など。コミュニケーションなので相手が必要。
交渉会話と交流会話
ブラウンとユールは、会話には交渉会話と交流会話があると指摘。
- 交渉会話:やりとりを通して何か具体的な物事の処理を行う会話。「ご飯食べに行かない?」
- 交流会話:日常会話。雑談。人間関係の維持に重点がある会話。「あの映画見た?」
社会言語能力
褒めの応答「Tシャツかわいいね」→否定応答「そうですか?セールで買った安物です」。
社会言語学的な逸脱
年下の生徒がため口で話す敬語の不使用。非母語話者に対して否定的な評価をすべき。
丁寧さの規範からの逸脱
仕事を辞めて旅に出る息子に「どうぞご勝手になさいませ」と突き放す。
本来、敬語として使う「どうぞ〜なさいませ」を息子に皮肉として使う。
逸脱(違反)
非母語話者が母語話者の言語規範を違反すること。
母語話者の方が日本語が上手なので、非母語話者は母語話者の規範(ルール)に従う。
談話能力
中級以上の会話の授業は、談話能力を高める指導が必要。
日本語はSOV型なので文の一番重要な部分が最後に来る。よって途中で相づちを打たないと話し手が不安になる。よって学習者にある程度、相づちを打つように指導する。
談話
談話:⽂を超えた⽂脈を持つまとまり。
モノローグ:舞台で自らの心境などを1人で話すこと。これも談話に入る。
テクスト(text):記録された語のまとまり。談話ではない。
書く授業でのコミュニケーション能力
中級以上は書く授業でもコミュニケーション能力を意識する。
・旅先で見聞きしたことを手紙で知らせる。
・取引先からの連絡内容を上司にメールで伝える。
・学食のアンケートを書く。
ある物語を別の登場人物の視点で再構築して書く。→これは一人で行う活動でコミュニケーション能力ではない。
プロフィシェンシーの育成
場面や状況に合わせて適切に言語を扱う能力。
proficiency=熟達。
コミュニケーション・ストラテジー
コミュニケーション・ストラテジー(伝達方略):コミュニケーションを成功させるために別の語で言い換えたり易しい文型を使ったりする工夫。会話の授業で意識させる。
言いたいことが言えない時に母語を直訳して使う。
タローン:「話し手と聞き手の間で意味が共有されないときに、その両者が意味にたどり着こうとするお互いの努力」と定義し次のように分類。
- 聞き直し:「住所」がわからなかった場合「ジュウショは何ですか?」のように、聞き取れたが、意味がわからない語彙を直接尋ねる。
- 修復(リペア):聞き間違え、言い間違え、言葉探し、誤解などの問題に対処するときに行う。
言葉探し:「住所」を「ジュー、ジュー」のように繰り返して相手に言ってもらう。
表現の不適切性も対象。「部長も食べ・・・召し上がりますか?」 - 回避:複雑な文法構造を使わずに別の構造を使う。「誰かに足を踏まれた」→「誰かが足を踏んだ」
- 言い換え:似た別の語を使う。新しい表現を作る造語などがある。「食パン」→「四角いパン」
- 母語使用:部分的に母語を使うコード・スイッチングや英語などの共通言語を使う意識的な転移がある。
- ジェスチャー:手ぶり・身ぶりに頼る。
言語処理ストラテジー
ラネカーは言語習得モデルを認知言語学からアプローチ。それについて言語処理ストラテジーが研究され、ユニット形成のストラテジーと付加のストラテジーの2つが見られた。
学習初期の段階で習得が不十分な時に間違って使う。
- ユニット形成のストラテジー:「その」と「あの」、「で」と「に」の混同。
「学校に/学校で」を名詞とセットで覚えたので混同している。 - 付加のストラテジー:「テレビがない」を「テレビあるじゃない」と言う。
「考えられません」を「考えれません」と言うのは、ただの「ら抜き言葉」で言語処理ストラテジーではない。