7.語用論的規範

【日本語教師養成講座】7.語用論的規範|2.語用論(意味論と語用論/言内の意味・言外の意味/グライス発話の含意/グライス協調の原理/オースティン発話行為理論/間接発話行為/遂行動詞)

7.語用論的規範|2.語用論(意味論と語用論の違い/発話行為理論/間接発話行為/協調の原理)

語用論的規範「意味論と語用論」「言内の意味・言外の意味」「グライス・発話の含意」「グライス・協調の原理」「オースティンの発話行為理論」「間接発話行為」「遂行動詞」などについてのまとめです。

意味論と語用論の違い

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  • 意味論:文字通りの意味
  • 語用論:特定の場面・状況で発話を扱う

言内の意味/言外の意味

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  • 言内の意味:特定の文脈・状況から切り離された辞書的な意味。
    「暑いですね」→気温が高いことの同意を相手に求めている。
  • 言外の意味:特定の文脈・状況のもとで相手に伝えようとする発話意図としての意味。
    「暑いですね」→「エアコンをつけて欲しい」と思ってる。
    遅刻した弟に「今何時だと思ってるんだ」。

グライス:発話の含意

グライスは、伝えたいこと・言外の意味を発話の含意と呼んだ。含意(がんい)=ホンネ。

グライス:協調の原理

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協調の原理グライスが提唱。会話の目的や方向を無視してそれと矛盾するような発言はしない、聞き手は話し手を理解しようとしデタラメな推論で解釈してる訳ではないという原理。
例:「懇親会、何曜だっけ?」の質問に対し、
木曜日であることに加え「18時からね」「駅前の焼肉屋ね」「ひとり3000円ね」と答える。
協調の原理には、以下の4つの公理(コミュニケーションのルール)がある。

  1. 量の公理:必要な量以上・以下を与えない。
    「次のバスいつかな?」→「9月22日月曜日午前11時22分00秒だよ」。
  2. 質の公理:確信してないことは言わない。
    「雨あがりますかね?」→「あがりますよ」。
  3. 関係の公理:関係あることだけ話す。
    「連休はどこか出かけたの?」→「子供が風邪引いて・・・」これは違反してない。
  4. 様式の公理:様態の公理。曖昧に言わず簡潔に順序立てて言う。
    「明日の会議の資料はできたか」→「一応揃っていますが・・・分析結果がまだ届いておらず・・・」。


これに反していたとしても「発話の含意(ホンネ)」が伝わる。

オースティン:発話行為理論

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オースティン:発話によって遂行される行為(発話行為)を3タイプに分類。

  1. 発語行為:「暑いですね」と音声を発すること
  2. 発語内行為:聞き手にエアコンの温度を下げて欲しいという「依頼」が伝わること
  3. 発語媒介行為:聞き手がエアコンの温度を下げること

サール:間接発話行為

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サール:オースティンの弟子で発語内行為を分析した。相手に直接的ではなく間接的な別の発話をすることを間接発話行為と呼んだ。

  • 「消しゴム持ってる?」→「これ使って」
    言語形式的には「疑問」だが「依頼」の意味。
  • 「何時だと思ってるの?」「もう11時よ」→「お休みなさい」
    「命令」を表わすのに疑問文・平叙文が使われている。

適切性条件:この発話行為を適切に行うための条件。以下の4つを提唱。
例:AがBに消しゴムを借りる場合

  1. 準備条件:Bは消しゴムを持っている
  2. 誠実性条件:AはBから消しゴムを借りたいと思っている
  3. 命題内容条件:AがBに消しゴムを貸して欲しいことを伝える
  4. 本質条件:Aが消しゴムを借りたいために発話したことをBが認める

「喉が渇いたなぁ」→水を持ってきて欲しい。

遂行動詞

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オースティンは発話した時点でその行為を行ったことになる動詞を遂行動詞と呼んだ。
サールは遂行動詞を以下の5つに分類した。

  • 断言型:「断言する・答える」。
  • 行為拘束型:「約束する・保証する」。
  • 行為指導型:「命ずる・命令する」。
  • 宣告命名型:「通知する・命名する」。
  • 心理表出型:「感謝する・謝罪する」。

発話の意味

・発話を構成するそれぞれの語の辞書的な意味
・発話された場面や発話参加者が持つ背景的知識
によって決まる。

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