日本語教師養成講座の単元テスト用として自己学習のために作った穴埋めノートです。
空欄を選択すると答えが表示されます。印刷時は答えを表示しています(倍率70%が◎)。
語用論的規範「談話分析」「隣接ペア」「優先応答」「談話標識」「修復」「結束性」「照応」「橋渡し推論」「精緻化推論」などについてのまとめです。
談話分析
談話(ディスコース):文よりも大きい言語単位。複数の文が連結する構造。大きく以下の3つからなる。
- 開始部:「あのー、ちょっといい?」「うん、なに?」
- 本題:「課題の締め切りについて聞きたいんだけど」「今日の授業のね」「締め切りは木曜だっけ?」「木曜の15時までだって」
- 終結部:「ありがとう」「いえいえ」「じゃあね」「じゃあね」
開始部
切り出し:「あのー」「すみません」「いま、大丈夫?」
終結部
前終結:終結の前段階「ありがとう」
終結:会話の終わり「じゃあね」
共同発話
共同発話:複数の発話者で会話を作り上げること。
例:「毎日寒くて寒くて・・・」→他の人が「嫌ですねー」。
「寒くて」の後にマイナスの感情が言われることを予想して、他の人が言う。
「本当ですね」だと、共同発話ではなくただの相づち。
共同発話での繰り返し
相手への共感や一体感になるが、新しい情報は提示しない。
例:「今日は寒いね」→「寒いね」。
隣接ペア
隣接ペア:ペアになってる2つの発話。発話のやり取りの最小単位。
挿入連鎖:隣接ペアの間に別の隣接ペアが入ること。
ムーブ:複数の発話の組み合わせ。「ペン、貸してくれる?」「どうぞ」「ありがとう」。
優先応答と非優先応答
例「久しぶり、飲みに行かない?」の返答
- 優先応答:「いいねえ」
- 非優先応答:「うーん(フィラー)、最近あまり胃の調子が良くなくて(弁明)、明日も早いし・・・(言いさし)」。
「苦情」を言った場合、返答は「謝罪・補償・交換」が考えられるが、「弁明」で返答すると非優先応答。
談話分析その他
- 垣根表現(緩衝的表現・ヘッジ):断定的な表現を避けるために使う。
「明日のテスト、この漢字出る?」→「うーん、多分出るんじゃないかな」。
「今から手伝ってくれない?」→「明日とかならいいよ」。 - 注釈表現:解説者風の抽象的な説明を先につける。
「長くなるかも知れないけど」「こんなこと言いたくないんだけど」。 - スモールトーク:挨拶的な役割、コミュニケーションを円滑に進めるためのやり取り。「雨だね、よく降るね」「そうですね、もう4日目ですね」。
談話標識
談話標識(ディスコースマーカー):会話の流れをコントロール。その後にどう続くかの手がかりとなる。
- 呼びかけ・切り出し:「あのー」「えー」「すみません」「では」。
- 逆接的:「だけど」「でも」。
- 話題転換:「あのさぁ」「ていうか」「ところで」。
- 相づち:「へえ」「ふーん」「ええ」「うん」「そう」。話を聞いていることや理解していることを示している。言語メッセージ。
- フィラー:「うーん」「えーと」「まあ」「あのー」「そうですねえ」。次の発話までの時間を確保。非言語メッセージでパラ言語。
- 言いさし(言いよどみ):「仕事が溜まってて・・・」。文が終わらないまま終わるぼかし表現。
- 言い換え:「つまり」。後に説明が続く。会話の流れを決める。
「そこで・と言いますのは・だから」は談話標識ではない。
ターン
ターン:発話の順番のこと。
- ターン・テーキング:発話の順番を取ること。
- ターン・イールディング:発話の順番を譲ること。
オーバーラップ
オーバーラップ:相手の発話が終わってないのに発話を割り込むこと。
相手の話を遮(さえぎ)る訳ではない。
日本語の場合は「お疲れさまでした」など同時に発話して連帯感を強める場合に使う時もある。盛り上がって「そうそうそうそう」など。
修復
修復:発話の誤りを訂正すること。以下の4つに分けられる。
- 他者指摘/自己修復:「新宿に友達と会いました」→「新宿に?」→「新宿で友達と会いました」
- 自己指摘/他者修復:「新宿へ、に、を・・・」→「新宿で」→「ああ、新宿で友達と会いました」
- 自己指摘/自己修復:「新宿に、あっ、新宿で会いました」
- 他者指摘/他者修復:「新宿に友達と会いました」→「新宿にではなく新宿で」
修復は母語話者同士でもあり得る。
結束性
結束性:文と文の間の文法的・語彙的な結びつき
- 指示:「大きなダンボール箱があります。それを・・・」
- 代用:「早く帰った方がいいよ」「はい、そうします」
- 省略:「この問題難しいね」「いやあ、まったく」
- 接続詞:「質問しに行ったんですが、いらっしゃいませんでした」
- 類義語:「娘がお世話になりました」「礼儀正しいお嬢さんですね」
- 上位語と下位語:「何かお菓子を買って行こうか」「クッキーはどう?」
照応
照応:特定の語が他の文のどこと対応してるか。以下の3つがある。
例「久しぶりに浅草屋に行きました」
- 名詞照応:「いいねえ、浅草屋は安くておいしいよね」
- 指示詞照応:「いいねえ、あそこは安くておいしいよね」
- ゼロ照応:「いいねえ、おいしいよね」
さらに順番でみると、
- 前方照応:「パソコンを買って、それがすぐに壊れた」
「あれがすぐに壊れた」だと、前方照応が正しく使えてない。→「そ系」の現場指示の誤りではない。 - 後方照応:「こんなことがあったんだ、実は・・・」
推論
推論:談話を理解する時、与えられた情報で予測すること。
読解中に行われる推論で、以下の2つがある。
橋渡し推論
橋渡し推論:情報を関連づけて、その内容を理解するためにギャップを埋める推測。情報と情報をつなぐ推論。
例:
「山田さんは会社を休んだ。彼女は昨日熱を出した」という文章から「山田さんが熱で会社を休んだ」ことが分かる。
「発表を見に行った娘が、合格証を持って嬉しそうに戻ってきた」という文章から「娘が合格したこと」が分かる。
精緻化推論
精緻化推論:会話に出て来ないことを自分の既有知識で推測すること。穴を埋める。
例:
「今朝一番の寒波の影響で・・・」というニュースから「通勤に時間がかかりそうだ」と推測できる。
「昨日、さいたま市近郊で放火事件があった。さいたま市周辺では、三日前にも同様の事件起こっている。現在、埼玉県警では二つの事件の関連を調査中である。」というニュースから「犯人が同一人物」と推測できる。文章の後の展開を予測する。