日本語教師養成講座の単元テスト用として自己学習のために作った穴埋めノートです。
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語用論的規範「言語接触」「ピジンとクレオール」「リンガフランカ」「ダイグロシア」「多言語主義・複言語主義」「CEFR」「ELP」「言語的人権」「言語計画」「継承語」「アイデンティティ」「欲求5段階説」などについてのまとめです。
言語接触
ピジンとクレオール
言語接触:異なる言語を母語とする2つ以上の集団が社会的に接触すること。この中でどちらにも属さない状況や言語にピジンやクレオールがある。
- ピジン:通商・貿易のために作られた補助言語。特徴は「文法が簡単」「音韻や語彙が少ない」「文字がない」。話者がいなくなると消滅する。
- クレオール:ピジンが長期間使われていくうちに共通言語(母語)となったもの。文法体系が整っていて、音韻や語彙が多い。
母語話者が存在する。
公用語になったものもある。
ピジンと同様、複数言語からの語彙も使われる。
リンガフランカ
共通言語(リンガ・フランカ):異なる言語の話者同士が意思疎通のために使用する言語。現在では英語が多い。
台湾では日本語がリンガ・フランカとして使われていた。日本語をベースとしたピジンが生まれた。その後、「宜蘭クレオール(ぎらん)」というクレオールになった。
ダイグロシア
ダイグロシア:ファーガソンが提唱。1つの社会で2つ以上の言語変種が共存。
2つの言語が互いに機能を分担。
- 高変種(H言語):政治・法律など公的な場面で使用、学校教育で学習する。
- 低変種(L言語):日常会話で使用、自然と身につく。
ニューヨーク:英語とスペイン語。
パラオ:現地語と日本語。
ポリグロシア:3つの言語変種が共存
日本語の言語接触
日本語は中国語の影響を受けて漢語を取り入れてきた。
・16世紀半ば〜17世紀初め(室町時代末〜江戸時代初期):
ポルトガル語。キリスト(基督)・ボタン(釦)・テンプラ(天麩羅)。1543年ポルトガルから鉄砲伝来。
・18世紀〜19世紀半ば(江戸時代中期〜末期):
オランダ語。コーヒー(珈琲)・ビール(麦酒)・ガラス(硝子)。1853年ペリーの黒船来航。
が外国語として取り入れられた。明治時代以降は英語中心。
日本国内での言語接触はアイヌ語。
多言語主義・複言語主義
- 多言語主義:社会の中で複数の言語が共存。このうちのいくつかが公用語となる。どの言語を使っても不利にならないようにする。
- 複言語主義:個人レベルで複数の言語を使用。話せる言語を母語だけに限定しない、そのレベルもまちまちでよいという考え方。CEFRの基盤となる。
多文化主義:多言語主義を習慣・衣食などに広げていったもの。カナダのケベック州。
バイリンガル:2言語を使いこなせること(ただ使えるという事実)。複言語主義は使おうとする態度。
CEFR
CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠組み):1996年に発表。違う言語の習得状況を同じ評価基準で比べることができる。
ヨーロッパ統一のために行った言語政策がきっかけ。ウィルキンズの機能シラバス(CA)がCEFRの基となった。
この中で、レベルはまちまちでよいという複言語主義の考え方が出てきた。
A1・A2・B1・B2・C1・C2の6レベル。
A1・A2(基礎段階)、B1・B2(自立)、C1・C2(熟達)。→JFとは言い方が違う
国際交流基金(JF)がJF日本語教育スタンダードで採用。
ヨーロッパ言語学習記録帳(ELP)
1991〜1996年、ヨーロッパ言語学習記録帳(ELP)を開発。
学習記録(ポートフォリオ):個人の学習を記録したファイル。
「〜ができる(Can-do)」で評価したもの。ELPの発展形がCEFR。
自治体の言語サービス
学習者に多い母語として
- ポルトガル語:日系ブラジル人・ペルー人
- スペイン語:ブラジル以外の南米
- 中国語:中国語の留学生
- ベトナム語:ベトナムの留学生
- ネパール語:ネパール・インドの留学生
自治体の多言語対応に限界があり情報格差が問題となっている。そこでやさしい日本語が広がりつつある。
言語的人権
言語的人権:使いたい言語を自由に使用できる権利。
民族語:国・地域における少数言語。日本ではアイヌ語が代表。
危機言語:消滅の危機にさらされている言語。2009年ユネスコは世界で約2500の言語が消滅しかけていると報告。
日本の危機言語
日本では8言語が消滅の危機にある。
「アイヌ語・八丈語・沖縄語・八重山語・与那国語・国頭語・宮古語・奄美語」
アイヌ語以外は日本国内では方言として扱われている。
文化庁は言語・方言に対して保存・継承に取り組んでいるが、学校教育には導入していない。
アイヌ語
北海道に移住するアイヌ民族が使用。金田一京助により日本語と異なる言語ということが明らかになった。
- アイヌ文化振興法(アイヌ新法):1997年に日本政府が公布。アイヌ民族を日本民族と異なる独自の民族として認めた。
- アイヌ民族支援法:2019年に制定。
アイヌ民族を初めて先住民族と明記。アイヌ語を日本の公用語とするものではない。 - 同化政策:力を持つ支配的な民族が、力を持たない少数民族に自分たちの文化や生活様式を強要すること。これによりアイヌ語は明治時代に約100年途絶えた。
アイヌ語の音がそのまま残っている地名:札幌
手話
日本でも手話を言語のひとつにしようとしている。
テレビでよく見る公的な会見・ニュースで手話が出ているが、義務付けられてる訳ではない。
日本の手話は日本語と言語体系が異なる
手話言語:語順が違う。「山・海・行きたい・どちら」。
言語計画
言語計画:複数の言語が使用されている国でどの言語を優先するかなど決めること。以下の順序で進められる。
- 席次計画:複数の言語から主要な言語を選んで、どれを公用語・国語とするか、政治・教育はどの言語かなど順位付けすること
- 実体計画:選定した言語の文法書や辞書を作成
- 普及計画:言語を国民に普及する計画
インドでは難しかった。
継承語
継承語:親・直系親族の言語。
継承語教育:親・直系親族の言語を学ぶこと。オーストラリアなどでは政策として行われている。(同化計画と逆)
日本語の継承語教育
従来
第一言語が日本語である人のみ対象。
帰国後の日本社会への適応を目的。
国語や算数を海外の日本語学校で教える。→近年でも地域や保護者は教えていない。
日本文化も教える。
近年
帰国予定がなくても継承語として教える。
日系三世など第一言語が日本語じゃない人も対象。
家庭で日本語を使う機会がない人にも教える。
LOTEプログラム
LOTEプログラム:移民が多いオーストラリアで行われている継承語教育(同化政策とは逆)。9言語を優先。
アラビア語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語・インドネシア語・マレー語・中国語・日本語
オーストラリアでは日本語学校が少ないがLOTEプログラムにより小学校で日本語を学んでいる。
アイデンティティ
アイデンティティ:自分が何者であるかという意識・自己同一性。心理学者エリクソンが提唱。
8段階に分けた。5段階目は青年期(12〜18歳)=思春期にあたる。
アイデンティティ・クライシス:自分が何者であるか分からなくなる状態。
日本で3年留学した韓国に帰った留学生が、食卓でコチュジャン取ってと言って「ありがとう」と言った時、韓国ではコチュジャン取ったぐらいではありがとうと言わないので水臭いと思われた。
同時期に来日した児童でも年長者より年少者の方が母語の保持が難しい。
マズローの欲求5段階説
マズローは人間の欲求には階層性を持つと考えた。
1つ下の欲求が満たされると次の欲求を満たそうとする。
欲求5段階説:ピラミッド型で、一番上が「自己実現の欲求」。