11〜13.日本語教育実践

【日本語教師養成講座】11.日本語教育実践1(留学生) :②初級の授業(授業の流れ/クエスチョン/グローバルエラーとローカルエラー/フィードバック/リキャストとプロンプト/明確化要求/レアリアと生教材/インフォメーションギャップ/パターンプラクティス)

11.日本語教育実践1(留学生)/②初級の授業

日本語教育実践(留学生)「授業の流れ」「クローズドクエスチョン・オープンクエスチョン・ディスプレイクエスチョン」「グローバルエラーとローカルエラー」「明示的フィードバックと暗示的フィードバック」「リキャストとプロンプト」「明確化要求」「レアリアと生教材」「インフォメーションギャップ」「パターンプラクティス」などについてのまとめです。

授業計画の流れ

教材分析:教える文法の確認

学習項目の分析(発音・形・意味・機能・使用場面・例文)
到達目標の設定

授業の構成→教案作成→教具の準備→シュミレーション

発問の種類

  • クローズド・クエスチョン:答えがでやすい。

    イエス・ノー・クエスチョン:「はい」「いいえ」で答える。
    オータナティブ・クエスチョン:二者択一(alternative)。「りんごとみかんどちらが好きですか?」
  • オープン・クエスチョン:答えがでにくいが自由度が高い。「どんなくだものが好きですか?」
  • ディスプレイ・クエスチョン(提示質問):質問者は回答がわかっているのにわざと質問する。提示=教師が知っていることを提示する。
  • レファレンシャル・クエスチョン(指示質問):質問者が答えを知らない状態で尋ねる。指示=教師が知らないことを指示してもらう。(referential=参考の)

学習者の誤用

グローバルエラーとローカルエラー

  • ミステイク:言い間違い。
  • エラー:繰り返し起こす間違い。
    グローバル・エラー:コミュニケーション不可。
    ローカル・エラー:コミュニケーション可。

誤用訂正法

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プロンプト:教師が正解を言わない。正解にたどりつけるようにする。
リキャスト:教師が正解を言う。さりげなく訂正。

プロンプト

誘導(引き出し)・メタ言語的フィードバック・繰り返し・明確化要求
首をかしげて誤用の存在を知らせる。
正解を言わずに、自己訂正を促すフィードバックの方法。引き出す
既習であっても正しく使えない時に効果的。

リキャスト

さりげなく訂正。
S「これ、昨日買ったの辞書です」→T「昨日買った辞書ですか」。
S「インターネットで見る。できます。」→T「インターネットで見られますか」。

プライミング効果:他者が用いた言語形式に影響を受けて、それと同じ言語形式をよく使うようになること。リキャストにはプライミング効果がある。(priming=起爆剤)

明示的フィードバック

間違いをはっきり示す。

  • 明示的訂正(直接訂正):正解をはっきり言う。
    「漢字を読むできます」→「違います、漢字を読むことができます」。
  • 誘導(引き出し):誤用の前の部分まで言う。
    「漢字を読むできます」→「漢字を読・・・」。プロンプト
  • メタ言語的フィードバック:文法を説明して訂正。
    「きれいかったです」→「きれいはナ形容詞ですよ」。プロンプト

暗示的フィードバック

間違いをはっきり示さない。初級は暗示的フィードバックはよくない。

  • 繰り返し:「漢字を読むできます」→「漢字を読むできます?」。プロンプト
  • 明確化要求:再話を要求し、言い直しを求める。
    「漢字を読むできます」→「もう一度お願いします」。プロンプト
  • リキャスト:「漢字を読むできます」→「漢字を読むことができますか、いいですね」
  • 理解確認:自分の理解を述べ、正しいか確認する。

帰納的アプローチ

パターンを見つけて帰納的理解を目指す。

帰納的:使っているうちに法則を見つけること。
直接法でも出てくる。

初級授業の流れ

  1. 導入:どんな場面状況で使われる文法なのかを知る。2文程度。本物っぽさ真正性を求める。絵教材(写真や絵)を見せるビジュアルエイズペープサート(○✕の札)、レアリアなどを使う。
  2. 文型提示:形・接続など目で見て確認。
  3. ミーニングチェック:本当に分かっているかお互いに確認。
  4. 練習:機械練習など、3種類以上の練習。
  5. 展開:習った文法を自由に使いこなせるようになることが目標。ゲームをしてなるべく発話させてもよい。

ティーチャートーク:学習者が習った語彙だけで話す。不自然になる。学習者とコミュニケーションを取りやすくするために簡略化した話し方。

学習者は、インプット→インテイク→アウトプット。

新出語を導入する際

汎用性のある高頻度の語を選んで導入する。
似た語彙をセットにして導入するのは効率的だけど、中級以上。

学習した語を理解しているかどうか確認は、短文リピートではただのパターンプラクティスなので、確認できない。

レアリアと生教材の違い

レアリアと生教材、どちらも実物。

  • レアリア:「チラシ」という言葉を教えるのにスーパのチラシを使う。
  • ⽣教材:カレーの食材を買うタスクでチラシを使う。
    お菓子の食品表示を見て、賞味期限やアレルギー食材を確認する。
    実生活でも使用すること「真正性(しんせいせい)がある」という。

授業のPPP構造

P1.プレゼンテーション:導入・文型提示・ミーニングチェック(5分)
P2.プラクティス:練習(10分)→基礎練習
P3.プロダクティング:展開(15分)→応用練習

もっといい授業をするために

  • 内省(ないせい):自己反省。
  • PDSサイクル:Plan-Do-See。
  • PDCAサイクル:Plan-Do-Check-Action。
  • 自己研修型:自らの実践を分析し研究すること。

練習方法について

  1. 機械的練習言語形式面に焦点を当てる。パターンプラクティスを行って反射的に答えさせる。反復練習・拡張練習。
  2. 有意味の練習:形式面の理解と意味の理解に焦点を当てる。自分自身のことについて考える。シチュエーションドリル(場面を使った口頭練習)を行う。
  3. コミュニカティブな練習:言語の意味に焦点を当てる。流暢さの向上を目指す。真正性を重視する。
    学習者に能力差があっても工夫して対応する
    communicative。 

コミュニカティブな活動:ロールプレイ

モロウはロールプレイの重要要素として、
インフォメーションギャップ(情報差)
チョイス(選択権)
フィードバック(反応)
の3点をあげた。

インフォメーションギャップ

話し手と聞き手の間に存在する情報差。実際のコミュニケーションでは、両者の間に何らかの情報差があり、それを埋めるために会話し情報を共有する。

インフォメーション・ギャップ・タスク

アウトプットを重視するコミュニカティブ・アプローチで行うタスク。
理解可能なアウトプットを引き出すことのできる授業活動。→ロールプレイとか

チョイス

実際のコミュニケーションにおいて参加者がもっている選択の自由のこと。選択権。

パターン・プラクティス(文型練習)

基本練習の部分。
全体練習(コーラス)→個別練習(ソロ)の順で行う。
オーディオ・リンガル・メソッド

応答練習

T:毎日、テレビを見ますか。はい。
S:はい、見ます。
T:毎日、掃除をしますか。いいえ。
S:いいえ、しません。

代入練習

T:テレビを見ますか。映画。
S:映画を見ますか。
T:絵。
S:絵を見ますか。

ミムメム練習

T:見ますか。
S:見ますか。
T:はい、見ます。
S:はい、見ます。

変換練習

T:見ます。
S:見ません。
T:掃除します。
S:掃除しません。

拡張練習

T:買ってくれました。
S:買ってくれました。
T:時計を。
S:時計を買ってくれました。

ゲームでの練習

  • クローズ練習:2人だけでする。
  • オープン練習:みんなの前でする。
  • 机間巡視:練習中は教師が学習者の間をまわる。

シナリオ・プレイ

シナリオ・プレイ:役割練習。シナリオに沿ってペアで行う。コミュニカティブ・アプローチではないが、流暢さなどのコミュニケーション能力の育成に役立つ。

その他の練習方法

  • ラポート・トーク:相手の心をつかもうとする話し方。
    異文化理解で出てくる用語ラポールから。
  • フォローアップ・インタビュー:インタビューを録音・録画してそれを聞かせる。
  • ディクテーション:聞き取ったものをか書き取る。文脈から推測する力を養成。

初級のモデル会話

学習者が言いたい表現に置き換えて応用できるように作る。
「◯◯が欲しいです」のように、一部言い換える。
既習文型だけ使って話の内容が不自然になるのはNG。
モデル会話を聞かせるからと言って聴解の練習になるわけではない、モデル会話を使っていい。

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