5.言語と心理

【日本語教師養成講座】5.言語と心理|6.動機づけとバイリンガリズム(内的要因と外的要因/動機づけ/認知スタイル/バイリンガルとバイリンガリズム/ダブル・リミテッド/シングル・リミテッド/カミンズの風船説と氷山説/BICSとCALP/日本語指導が必要な児童)

5.言語と心理|6.動機づけとバイリンガリズム

言語と心理「内的要因と外的要因」「動機づけ」「認知スタイル」「バイリンガルとバイリンガリズム」「ダブル・リミテッド」「シングル・リミテッド」「カミンズの風船説と氷山説」「BICSとCALP」「日本語指導が必要な児童」などについてのまとめです。

内的要因と外的要因

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第二言語学習を学習する時、到達レベルに差が出る。この要因に内的要因と外的要因がある。

  • 内的要因:学習の動機・個人の性格・知能・言語適性・学習スタイル・学習開始年齢など。
  • 外的要因:学習する場所・学習の方法・学習の時間など。

動機づけ

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内的要因のうち第二言語学習を継続するための原動力のひとつに動機づけがある。

統合的動機づけと道具的動機づけ

ガードナーとランバートが提唱。

  • 統合的動機付け:目標言語の社会や文化への参加が第二言語を学習する動機となるもの。英語を勉強して海外で働きたい。どっぷり浸かりたい。
  • 道具的動機付け:就職・昇進・社会的または経済的評価など第二言語を学習することで実益を得ることが目的。テストで100点を取るため。

内発的動機づけと外発的動機づけ

デチ(デシ)が提唱。

  • 内発的動機付け:興味がある、おもしろいといった自分の内側から沸き起こる動機。おもしろいから勉強する。クラスメートと一緒に学ぶことによる喜び
    統合的動機付けと結びつく。
  • 外発的動機付け:外からの刺激(称賛・報酬・叱責しっせき)で何らかの利益を得ることが目的。親から褒められる→褒められなければ勉強しない。
    試験合格を目標・家族や教師から勧められた・
    単位を取るため・いい仕事に就くため・奨学金に応募するためも外発的動機付け。
    道具的動機付けと結びつく。

言語適性

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外国語を学ぶために必要な能力のこと。

・キャロル:現代言語適性テスト
音の認識・語や文を構成する能力は、言語の習得に有利。
音を語のまとまりとして認識して再生する能力は、習得の初期段階で有利。

学習スタイル

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勉強場所:カフェ・教室
勉強方法:ひたすら書く・お風呂で覚える(単語・テ形の活用)

学習スタイルは認知スタイル(情報処理の方法)の影響を受ける。

認知スタイル

  • 場独立型:細部を全体から切り離して分析的に把握する。周りに左右されない。
    文法などの形式中心の学習が得意。
    教師主導の学習を好む。→カフェでコツコツと
    「右の図形が左のどこにあるか」の問題ですぐに分かった人。
  • 場依存型:物事を全体的に捉える。
    社会的スキル・文脈からの判断・流れの把握が得意。
    コミュニケーションに焦点を当てた学習を好む。→教室でわいわい
  • 順序型:1つ1つ順序立てて情報を処理する。
  • 全体型:最初に全体を一度見渡して(俯瞰的:ふかんてき)情報を処理する。トップダウン的処理を得意とする。

バイリンガルとバイリンガリズム

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バイリンガル:二言語が使用できる人。
バイリンガリズム:個人もしくは社会が二言語を使用している状況。家庭では母語・職場では第二言語。

・モノリンガル:一言語使用者。
・バイリンガル:二言語使用できる人。
・マルチリンガル:三言語以上使用できる人。

バイリンガル

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二言語(言語A・言語B)併用下での分類。

言語能力での分類:バイリテラル

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  • 読み書き型バイリンガル(バイリテラル):言語Bが、4技能できる。が、成績が上がらない外国人児童生徒がいる。
  • 会話型バイリンガル:言語Bが、聞く・話すのみ。
  • 聴解型バイリンガル:言語Bが、聞くのみ。おじいさん・おばあさんが話していた。

読み書きだけできる人は当てはまる言葉がない。
バイリテラル=「bi(複)+literal(リテラル・文字通り・定数)」

言語熟達度の分類

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「年齢相応レベルか」が基準:カミンズの敷居理論。

  • 均衡バイリンガル(バランス・バイリンガル):二つの言語を年齢相応の母語話者レベルで使用できる。(きんこう)
  • 偏重バイリンガル(ドミナント・バイリンガル):一方の言語のみ年齢相応の母語話者レベルで使用できる。(へんちょう)→みんなこれ。
  • 限定的バイリンガル(ダブル・リミテッド・バイリンガル):両言語とも十分な言語能力を身に付けていない。→子供によくある。

ダブル・リミテッド

母語と現地語の両方の能力が年齢適応のレベルに達していない状態。
小学校低学年で来日した子どもに多い。
例:渡辺直美

シングル・リミテッド

ダブル・リミテッドよりさらに問題。
母語か現地語のどちらかしか話せない子どもで、その言語が年齢適応のレベルに達していない状態。
赤ちゃんの時に日本に来て日本語しか知らないが日本語も上手く話せない、小学校低学年で来日して日本語も話せないし母語も忘れてる。


ダブル・リミテッドとシングル・リミテッドの子どもは思春期になっても自分の気持ちが上手く伝えられず、学習にも影響する。
そのために日本語指導が必要。

バイリンガリズムと認知理論

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学習言語は言語能力(言語的側面)と認知能力(認知的側面)から成る。

言語的側面と認知的側面

  • 言語的側面:スピーチに適したフォーマルな言語を使う能力。
  • 認知的側面
    文章を理解するための背景知識。
    ノートをとったり要約したりする能力。
    著者の見方を理解する能力。

カミンズの風船説と氷山説

カミンズが提唱。風船説氷山説。バイリンガルの頭の中はどうなっているか?

  • 風船説:分離基底言語能力モデル(SUP:Separate Underlying Proficiency)。
    二言語基底分離説。片方を使う時は片方が膨らむ。二言語は独立して共存。
  • 氷山説:共有基底言語能力モデル(CUP:Common Underlying Proficiency)。
    二言語基底共有説。2つの言語能力は底の見えない部分は共通している。
    母語で発達したCALP(学習言語能力)は第二言語にも有効(転移する)。

発達相互依存仮設

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発達相互依存仮設カミンズが提唱。第二言語習得は第一言語の発達度に依存している。
言語能力をBICSとCALPに分けた。
ただし、BICSもCALPもコミュニケーションを介して発達する。

BICSとCALP

  • 生活言語能力BICS(ビックス)。Basic Interpersonal communicative Skills。
    生活場面で必要とされる言語能力。文脈の支えがあり、2年ほどで習得可能。
    場面(文脈)依存度が高い。→相手の表情を見て理解できる能力。そんなに頭を使わなくてもいい。
    学校の指導が必要ないという訳ではない。
  • 学習言語能力CALP(カルプ)。Cognitive Academic Language Prificiency。
    学習場面で必要とされる言語能。文脈の支えがなく、習得には5〜7年かかる。
    「Cognitive=認識の」なので、
    認知力必要度が高く、場面(文脈)依存度が低い。→勉強なので頭を使う。
    学校で計画的に指導する。

日本語指導が必要な児童

日本語で生活・学習が難しい。
→2014年文部科学省の教育施策「特別の教育課程

4年後、平成30年度(2018年度)の日本語指導が必要な児童(約5万人)のうち、4分の1は日本語指導が受けられていない。
教員免許が必要。教員は激務なので日本語を教えてる場合ではない。

「特別の教育課程」を実施していない理由の第1位:
日本語と教科の統合的指導を行う担当教員がいないため。

これを解決するため、2019年「外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議」が設置された。
最後の報告では、
「日本語教師」を、学校での日本語指導に積極的に活用
となってる。

日本語指導が必要な外国籍の児童生徒の母語別在籍状況

「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成30年度)」の結果について

平成30年度(2018年度)のランキング

令和元年(2019年)9月27日公表
令和2年(2020年)1月10日一部訂正

1位:ポルトガル語
2位:中国語
3位:フィリピン語(フィリピン人の子)
4位:スペイン語(日系のペルー人の子)

日本語指導が必要な外国籍の児童生徒の母語別在籍状況

日本語指導が必要な児童生徒数(外国籍・日本国籍)

公立学校における日本語指導が必要な児童生徒数(外国籍・日本国籍)

平成30年度(2018年度):51,126人。5万人を超えた。

公立学校における日本語指導が必要な児童生徒数(外国籍・日本国籍)

海外で過ごす日本人の子ども

在外教育施設:日本人学校・補習授業校

海外の日本人学校・補習授業校・私立在外教育施設を在外教育施設という。

  • 日本人学校:日本国内の小・中学校または高等学校と同等の教育を行うために設置。
    文部科学省認定
  • 補習授業校:現地の学校や国際学校(インターナショナルスクール)に通う日本人の子どもに対し、土曜日や放課後など日本の小・中学校の一部の教科の授業を日本語で行う。

継承語の教育:イマージョン教育

・LAとかでは日本語(継承語)と英語(現地語)のイマージョン教育を行う学校がある。
・継承語のレベル分けしてクラスを作るには子どもが少ないので、同じクラスで継承語を学ぶ。
・世代によって継承語の熟達度は異なる。
・一世→二世→三世になるにつれて継承語の保持率が下がる。

親のために自分から継承語を学びたいと思う子どもが多いとは限らない。

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