6.音声・音韻/文字・表記

【日本語教師養成講座】6.音声・音韻/文字・表記|2.子音・音声記号(音素/拍モーラと音節/母音の無声化/撥音の異音/口蓋化/帯気性/順行同化と逆行同化)

6.音声・音韻/文字・表記|2.子音・音声記号(音素/拍と音節/口蓋化)

音声・音韻/文字・表記「音素」「拍(モーラ)と音節」「母音の無声化」「撥音の異音」「口蓋化」「帯気性」「順行同化と逆行同化」などについてのまとめです。

音素

420

音素:最小の音の単位。表記は//。日本語では23個。

  • 母音音素:/a/ /i/ /u/ /e/ /o/
  • 子音音素:/k/ /g/ /s/ /z/ 単独では拍にならずに、母音音素と一緒に拍となる
  • 特殊音素:撥音音素・促音音素・引く音

英語の音素はアルファベットの数(26字)と一致しない。1文字1音素ではない。「mountain」は/mάʊntən/。

拍(モーラ)と音節

426

(モーラ):特殊拍「ン・ッ・ー」も数える。
日本語の音韻論的性質は等時性(1モーラが同じ長さ)。
音節:特殊拍「ン・ッ・ー」は数えない。

拍数 ア・ク・シュ
(3拍)
シ・ン・ポ
(3拍)
シ・ッ・ペ
(3拍)
シ・ー・ツ
(3拍)
音節数 ア・ク・シュ
(3音節)
シン・ポ
(2音節)
シッ・ペ
(2音節)
シー・ツ
(2音節)

「挑戦」:チョウセン→チョー・セン→2音節

  • 音節リズム:韓国語・ベトナム語・スペイン語。
  • 強勢リズム:英語。
  • モーラリズム:日本語。

フット

426

月火水

「げつ・か・すい」は5拍。
「げつ・かあ・すい」は6拍。

「か」なのに2拍で「かあ」となる傾向がある。これをフットという。
テンポよく言う超分節的特徴(プロソディー)のひとつ。

誤用の例

不要な促音:「西(にし:2拍)→日誌(にっし:3拍)」。

母音の無声化

423

高母音(狭母音)「イ[i]・ウ[ɯ]」が、無声子音「カサタハパ行」に挟まれている「また」・無声子音が文末「おか・で」、この時、声帯振動がなくなり規則的に無声化する。
「ました(mashita)」:[i]が無声子音[sh][t]に挟まれている。

また、方言差が大きい。「します」の場合、東京方言は低高低で「す」が無声化するが、関西方言は低低高で無声化しない。

アクセントの核は、はっきり発音する必要があるので無声化しにくいが、「ながさきけん」は「nagasakiken」の「ki」が無声化する。
無声化する「nagasakiken」と無声化しない「nagasakiken」では、アクセントの核が移動する。

無声子音・無音区間

無声化するのは、1つの語に1つだけ。無声化しても意味理解に影響を与えない。
・「北」:「/kita/」で「i」が無声子音「k・t」に挟まれて「(キ)タ」になる。
・「あか」:無声子音「k」を含んでて「(ア)カ」になる。

この「キ」「ア」の聞こえない部分を無音区間という。

中母音・低母音(広母音)での無声化

高母音(狭母音)だけでなく、中母音「エ[e]・オ[o]」・低母音(広母音)「ア[a]」でも環境によっては無声化が起こる。
語頭の「カ・コ・ハ・ホ」はアクセントがない場合、無声化しやすい。

例:「ばん」「子ども:ども」「話:なし」「北陸:くりく」「北西:くせい」。

語頭に長音「ー」や撥音「ン」が続く時は、母音が先行するので無声化しない。
例:「口実:こうじつ」「明快:めいかい」「観戦:かんせん」。

句末の無声化

「無声⼦⾳+⺟⾳」で無声化。
「保守:ホシュ

撥音の音声

後続音によって発声方法が異なる。

後続音がない時:有声口蓋垂鼻音[ɴ]。
後続音が「あさわはや行」:鼻母音。
後続音が「あさわはや行」以外:後続する音の調音点の有声鼻音。

[m]:プブム[p][b][m]
[n]:ツドゥヅヅヅンル[t][d][tz][dz][z][n][r]
[jn]:チュヂュジュ[ts][dʒ][ʒ]
[nj]:クグンジュ[k][g][nj]

撥音の異音

421

口腔を閉鎖する「鼻音・破裂音・破擦音・弾(はじ)き音」の子音が後に続く時、撥音「ン」は次の子音と同じ調音点の鼻音になる。
また「サンタ・サンバ」の「ン」がしっかり鼻にかけた「ン」にならずに「サン」の「サ」の口の形のままになる。

口蓋化

411

段の子音に起こり、調音点(舌)が硬口蓋の方にずれること。「ティッシュ」の「ィ」で口蓋化している。
イ段の子音に「ャ・ュ・ョ」が付くと口蓋化する。→「キャ・ニャ・ミャ」

撥音の後の口蓋化

「干拓:かんたく」
「貫通:かんつう」
「関東:かんとう」
「官邸:かんてい」
「完治:かんち」→撥音「ン」の後がイ段音の時、口蓋化(舌が奥に動く)。他のは歯茎音のまま。

帯気性

口腔内の閉鎖の解放後に息が流れる音があるのは有気音、ないのは無気音。(たいきせい)
帯気性:有気か無気か。

  • 日本語・スペイン語:有声音と無声音(声帯振動の有無)で音を判断。
  • 中国語・韓国語(朝鮮語)・ベトナム語・タイ語:有気音と無気音で音を判断。

中国人の日本語学習者は「ありがとう」が「ありがどう」と聞こえる。中国語は清音と濁音の区別がない。気音があるかどうか。[bo][po]

同化

ある音が隣接する音の影響で共通の特徴を持つ音になる現象。異形態。

順行同化と逆行同化

  • 順行同化:先行音が後続の音に影響を与える。
    英語の複数形=s[s/z]、過去形=ed[t/d]。
    「一本(いっぽん)・二本(にほん)」の「本」。→前の一か二によって本の読み方が変わる
  • 逆行同化:後続音が先行音に影響を与える促音「ッ」・撥音「ン」のこと。
    1グループのテ形のように動詞によって末尾音が変わること「行きます→行って」。
    「一番(いちばん)・一本(いっぽん)」の「一」。→後ろの番か本によって一の読み方が変わる。
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