6.音声・音韻/文字・表記

【日本語教師養成講座】6.音声・音韻/文字・表記|5.文字・表記概説、文字としての漢字(表意文字と表音文字/六書/部首/音読みと訓読み/湯桶読み/熟字訓/呉音・漢音・唐音/学校文法)

5.文字・表記概説、文字としての漢字(文字の分類/漢字の分類/音読みと訓読み/中国・韓国の字体)

音声・音韻/文字・表記「表意文字と表音文字」「六書」「部首」「音読みと訓読み」「湯桶読み」「熟字訓」「呉音・漢音・唐音」「学校文法」などについてのまとめです。

文字の分類

表意文字と表音文字

161
  • 表意文字(表語文字):その字自体が意味を持つ、例漢字。数字・数学記号・ピクトグラムも。
  • 表音文字:字には意味がなく音を表すだけ、例仮名ローマ字
    仮名:子音と母音の組み合わせで文字になる音節文字。
    ローマ字:子音と母音そのものが文字になる音素文字。

表語文字(漢字)の数>表音文字(仮名)の数。

漢字の分類

成り立ちによる分類:六書

155

六書:漢字の成り立ちにより6分類。(りくしょ)

六書
  1. 象形文字:形を絵で表したもの、例「月・日・口」
  2. 指事文字:象形では表現できないものを点や線で表す、例「上・下」
  3. 会意文字:意味を表す要素を組み合わせる、例「林・明」(かいい)
  4. 形成文字:意味を表す要素と音を表す要素を組み合わせる、例「糖・銅」
  5. 転注文字:本来の意味から派生、例「楽(元は音楽の意味)」
  6. 仮借文字:音が似ている字を使う(かしゃ)、例「亜米利加・印度・豆・我」

部首による分類

156

部首:漢字を構成する要素の共通の字形。7種類ある。

部首
  1. :左右に分けた左側の部分(へん)。「語」
  2. :左右に分けた右側の部分(つくり)。「頭」の部首は旁
  3. :上下に分けた上の部分(かんむり)。「草」
  4. :上下に分けた下の部分(あし)。「思」
  5. :上部から左側へ垂れ下がっている部分(たれ)。「病」
  6. :左上から下部を巡っている部分(にょう)。「進」
  7. :全体を包み囲んでいる部分(かまえ)。「国」

日本で作られた漢字

国字:日本で作られた漢字のこと。代表的なもの「榊・辻・峠・働」。

音読みと訓読み

157

呉音・漢音・唐音

日本語は音読み訓読みの2種類の読み方がある。
漢字圏は音読みのみで1つの読み方しかないことが多い。だから日本語は難しい。日本の音読みには3種類ある。

  1. 呉音:5〜6世紀頃伝わった揚子江の下流地域の音。「頭巾(ズキン)」「神(ジン)」など濁音を含む、「明(ミョウ)」「星(ジョウ)」「行(ギョウ)」など拗音を含む読み方が多い。(ごおん)
  2. 漢音:7〜9世紀頃、隋や唐の留学生が持ち帰った音(一番多い)。「頭髪(トウハツ)」(かんおん)
  3. 唐音:13世紀頃、宋・元・明に禅僧や商人が持ち込んだ音(別名:唐宋音)。「饅頭(マンジュウ)」「扇子(センス)」など特殊な読み方が多い。(とうおん)

音読みと訓読み

  • 音読み:「山=サン」と読んだ時、それだけで意味が分からない。
    2拍の時、2拍目が「ウンチクキツイ」の7種の音で終わる。
  • 訓読み:「山=やま」と読んだ時、それだけで意味が分かる。
    「温かい」送り仮名が必要。

次の読み方は音読み?訓読み?

蚊「ぶん」:音読み
蚊「か」:訓読み
茶「ちゃ」:音読み
茶「さ」:音読み
肉「にく」:音読み
絵「え」:音読み

漢語:音読み+音読み

愛情:音読み+音読み

湯桶読み:訓読み+音読み

焼肉:訓読み+音読み
友達:訓読み+音読み
場所:訓読み+音読み

異字同訓と異字同音

異字同訓:訓読みが同じ場合、音読みでどの漢字か表す。
「時間を計る・殺意を謀る・解決を図る・審議会に諮る」「興る(おこる)・起こる」
異字同音:異なる字で同じ音読みをする。
「後援・公園・公演・好演」

熟字訓

157

熟字訓:熟語全体で1つの読みがついているもの。
「小豆(あずき)・土産(みやげ)・明日(あした)」。

中国・韓国の字体

337
  • 繁体字:画数の多い旧字体。台湾香港で使われている。
    韓国で漢字を使う場合も繁体字。(はんたいじ)
  • 簡体字:繁体字の字画を少なくした。中国で使われている。(かんたいじ)
  • 新字体:日本で使われている。(しんじたい)

日本語史

162
  • 万葉仮名:日本語の音を表すために漢字を使った。これを崩したものが平仮名

日本語研究史

164
  • 橋本進吉:日本の学校文法のベースを作った。(しんきち)

学校文法

学校文法の特徴。

  • 自立語:文節に分けると「月が|きれいな|晩でした」で、文節の先頭にくる語「月」「きれいな」「晩」を自立語という。文節で自立語は1つ
  • 指示詞「こそあど」:品詞ではない。品詞「代名詞」のひとつ。
  • 文節:品詞で区切った単位ではない。文節に分けると「この|問題を|やって|おきなさい」。学校文法では「ね・さ・よ」を付けて区切る。
  • 単独で分節を作れる語:活用する品詞は動詞形容詞形容動詞の3つ。
  • 活用があるもの:自立語である「動詞・形容詞・形容動詞」、付属語である「助動詞」は活用がある。活用は変化しない部分語幹と変化する部分活用語尾に分けられる。「書く」の語幹は「か」、活用語尾は「か(ない:未然形)・き(ます:連用形)・く(とき:終止形・連体形)・け(命令形)」。
  • 日本語教育における辞書形:学校文法では終止形連体形になる。「書く・書くとき」
  • 単独で使えない活用形:動詞の未然形「書かない→ないが付く」。動詞の命令形「書け」・形容動詞の終止形「静かだ」・形容動詞の仮定形「静かなら」は単独で使える。
  • 丁寧体「デス・マス体」:動詞・形容動詞は連用形に付く「書きます・静かです」。形容詞は終止形に付く「高いです」。
  • 活用形の種類:学校文法より日本語文法の方が活用形が多い。日本語文法は「マス形・テ形・タ形・ナイ形・意向形(書こう)・受身形(書かれ)・使役形(書かせ)」。
  • 機能語「助詞・助動詞」は主に平仮名で表記する。「かもしれない」。
  • 日本語文法の意向形

    「行こう」:勧誘と意向がある。

日本語の歴史

上代:奈良時代以前
中古:平安時代→この時代に漢文訓読体が発達した
中世:鎌倉・室町・安土桃山時代↓
近世:江戸時代
近代:明治・大正・昭和20年まで
現代:昭和20年以降

古代語と近代語

  • 古代語:中世前半まで「キ・ケリ・ツ・ヌ」
  • 近代語:中世後半から「テイル・タ」

古代語から近代語への変化

終止形と連体形の合流や二段動詞の一段化

例:「食ぶ→食ぶる→食べる」。

・終止形と連体形の合流:
終止形「食ぶ」が「食ぶる」になって、連体形の「食ぶる」と一緒になった。
・二段動詞の一段化:
古語は二段動詞「食べない/食べて/食ぶる/食ぶるとき/食ぶれば/食べよ」。

現代語は一段動詞「食べない/食べて/食べる/食べるとき/食べれば/食べよ」になった。

ヒューマンアカデミー(2017)『日本語教育教科書 日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド 第4版』翔泳社