2.日本語教授法

【日本語教師養成講座】2.日本語教授法|5.目的・対象別日本語教育法(日本語レベル/留学生/JLPT/EJU/生活者としての外国人/スキャニングとスキミング/外国人児童生徒/JSLカリキュラム/特別の教育課程/漢字の授業)

2.日本語教授法|5.目的・対象別日本語教育法(レベル/留学生)

日本語教授法「日本語レベル」「留学生」「日本語能力試験(JLPT)」「日本留学試験(EJU)」「生活者としての外国人」「スキャニングとスキミング」「外国人児童生徒」「JSLカリキュラム」「特別の教育課程」「漢字の授業」などについてのまとめです。

日本語レベル

  • 初級レベル:一般的な目的の日本語JGP「例:おはよう」
    Japanese for General Purposes
  • 中級レベル:特別な目的の日本語JSP「例:本日はお日柄もよく」
    Japanese for Special(Specific) Purposes
  • 上級レベル:専門的
学習時間 語彙 漢字
初級 約300時間 約1,500〜2,000語程度 500字程度
中級 約600時間 約5,000〜7,000語程度 1,000〜1,500字程度
上級 約900時間 約10,000語程度 2,000〜2,500字程度

語彙数:コミュニケーションで運用できる語彙数。
日本人の語彙数は、義務教育終了時点で約30,000語、20歳で約50,000語。

新出語を導入する際の留意点

  • 初級:
    汎用性がある高頻度の語を選んで導入する。
    短文リピートは短期記憶には残るが、理解しているかどうかの確認にはならない。
  • 中級:
    形や意味に類似性のあるものをセットにして導入する。
    階層的関係(鳥とすずめ)を示して指導することがある。
    類義語・対義語を示す。対義語は「高い」に対して「安い・低い」があり1対1ではないので注意が必要。

意図的学習と付随的学習

意図的学習:漫画を読んで知った語・新聞を読んでいるときに見つけた未知語・アニメのセリフ。
付随的学習:漢字クラスで習った語を車内広告で見つけて理解できた。偶発的学習のこと。

留学生

日本語能力試験(JLPT)

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日本語能力試験:国内では年2回(7月・12月)、海外では年1〜2回実施。
実施機関が異なる。
国内:日本国際教育支援協会(JEES)→日本語教育能力検定試験と同じ
海外:国際交流基金

  • 1984年:試験開始。1〜4級。→旧日本語能力試験
  • 2010年:試験改定。N1N5の5段階になる。
    合格者は「Can-doリスト」で自己評価する。

大学入試の一部に組み込まれていたが、2002年からは日留試がそれに変わった国もある。
採点方法は、大規模試験で実施されるIRTを採用。→IRT

日本語能力試験(JLPT) 受験者数

2020年(令和2年)12月:国内19万人・海外18万人→7月は中止。
2019年(令和元年)12月:国内24万人・海外38万人
2019年(令和元年):国内44万人・海外73万人→年間117万人。海外の受験者の方が多い。

日本留学試験(日留試・EJU)

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日本留学試験2002年から実施。年2回(6月と11月)、国内海外で実施。
実施機関は日本学生機構(JASSO)。
日本語・理科・社会・数学の4科目で日本語以外はマークシート。
日本語以外は、日本語か英語を選択できる。

  • 2002年:試験開始。日本語科目「聴解」「聴読解」「読解」「記述」の4領域。
  • 2010年:試験改定。日本語科目「聴解・聴読解」「読解」「記述」の3領域になる。

アカデミック・ジャパニーズ:大学での学習・研究活動に必要な日本語力。
日留試はアカデミック・ジャパニーズの力を問う試験で、問題解決能力は含まれない。
採点方法はIRT。JLPTと同じ。

JLPTとEJUの違い

  • JLPT:作文なし。産出「話す・書く」入らない。→OPIという別の試験がある。
  • EJU:作文あり

生活者としての外国人

「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案

日本で生活する外国人に対して、生活をしていく上で必要不可欠な行為をまとめたもの。
文化庁が作っている。

標準的なカリキュラム案で扱う生活上の行為の事例

モジュール型教材

モジュール型教材各課が単独で完結している教材のこと。
継続して教室へ通うことが難しい学習者向け。

例:目標「地震が起きた際に適切な行動がとれるようになる」

授業の流れ。

  • STEP1:地震の写真を見せる。自分の経験や感じたことを話し合う。とるべき行動をグループで考える。
  • STEP2:防災用品の実物に触れる。具体的な指示を与えて行動する。避難場所を調べる。防災用品リストを作る。
  • STEP3:地震発生後のニュースを聞く。
  • STEP4:振り返り。

スキャニングとスキミング

スキャニング探し読み・探し聞き。特定の必要な情報だけ抜き取る。トップダウン処理が必要。
スキミングななめ読み。だいたいの内容(要点・大意)を抜き取る。

最近の日本語教室では対話中心の活動が行われている。学習者と支援者が対等な関係で日本語のコミュニケーションをしながら日本語を身につける。

外国人児童生徒

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JSLカリキュラム

JSLカリキュラム(小学校編・中学校編):文部科学省が開発。日本語指導と教科指導とを総合的に捉え、学習活動に参加するための力の育成を目指す。
日本語の力が不十分なため、日常の学習活動に支障が生じている子どもたちに対して、学習活動に参加するための力の育成を図るためのカリキュラム。
「JSL=第二言語としての日本語」

文部科学省の教育施策:特別の教育課程

日本語能力を高めるだけでなく、各教科の指導も含む。

取り出しの日本語指導

2014年文部科学省から「平成26年学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の施行について(通知」が出される。
日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施。学校教育の制度として公立の小・中学校が授業として提供。

日本語指導が必要な児童

JSL対話型アセスメントDLA

JSL対話型アセスメントDLA:話す・読む・書く・聴くの4技能テスト。
Dialogic Language Assessment for Japanese as a Second Language。
これも文部科学省が作成。

外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA

漢字の授業

指導上の留意点

・漢字の筆順:一般的な順序を示し(左→右・上→下)、ドリルで反復練習させる。
・漢字の導入順:単純な漢字だけでなく、生活で必要性が高いものを優先させる。
・漢字の字形:板書やカードを使う。
・漢字の読み:ひらがなと音声を使う。
・送り仮名のある漢字:送り仮名と一緒に書かせる。

・年少者への指導:意味よりも前に文字を教える。
・英語圏の学習者への指導:漢字の成り立ちなど構成を認識させる。

非漢字系学習者

字形を意識させる。「名名名名名」の中に「各」を探す。
字形が同一かどうかを識別する練習。

漢字の練習問題

・品詞の問題:「開始・初期・最初・原始」で品詞が違うのは「開始」→動詞になる。
・部首の問題:「広・庁・店・原」で違うグループは「」→部首が違う。
・対義表現の問題:「日常」と同じ関係にあるもの「無日常・不日常・未日常・非日常」→無不未非のどれか。
・読み方の問題:「安」と同じ関係にあるもの「暗・短・新・近」→「」。

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