日本語教師養成講座の単元テスト用として自己学習のために作った穴埋めノートです。
空欄を選択すると答えが表示されます。印刷時は答えを表示しています(倍率70%が◎)。
日本語教授法「コミュニカティブ・アプローチ(CA)」「ナチュラル・アプローチ」「クラッシェンの5つの仮設」「タスク中心の教授法(TBLT)」「CLIL」「ヒューマニスティックな教授法」「指導法」などについてのまとめです。
コミュニケーションにつながる教授法
第二次世界大戦後、外国語学習をする人が増え言語学習研究が行われた。1970年以降の教授法。
1970年代〜:コミュニカティブ・アプローチ(CA) – FonM
アウトプット重視のFonM
コミュニカティブ・アプローチ(CA)
1972年、言語学者ウィルキンズが提唱。
概念シラバス・機能シラバスを採用し、シラバス作成に必要なニーズ調査も重要視。
AL法の批判から生まれた。
FonM→後々、CEFRの基となる。「communicative」→「communication=伝達」。
FonM=フォーカス・オン・ミーニング(意味重視)
- 言語形式や構造より文脈における言語の機能や意味を重視する。「例:謝る・依頼する」
- 母語話者並みの正確な発音よりやり取りの流暢さを重視する。
- 文法の正確さが身につかない。
- コミュニケーション能力の獲得、意思伝達ができるようになる。(ハイムズ)
- コミュニカティブな活動:コミュニカティブ・アプローチで行うタスク。
ロールプレイ:アウトプット重視
ジクソー・リーディング:読解の授業でコミュニケーションを必要とする。 - 重要な3つの要素:「インフォメーション・ギャップ」「チョイス」「フィードバック」。
参考:アウトプット重視でない授業活動とは
・プロセシング・インストラクション:インプット重視の指導法。
・パラレル・リーディング:テキストを見ながら音読。シャドーイングはテキストを見ない。
・サイト・トランスレーション:スラッシュで単語を分けながら語順のまま訳していく。同時通訳。
1970年代〜:ナチュラル・アプローチ – FonM
インプット重視のFonM
ナチュラル・アプローチ
テレルが提唱。クラッシェンの第二言語習得理論仮設(5つの仮説)を基本方針とする。
- 言語は自然に習得されるもので意識的学習との接点はない。
- 言語形式の学習のための構造シラバスは使用しない。
- 教材は教科書だけでなく実生活で使う身近な素材も取り入れる。
- 聴解重視でティーチャートークを使いこなす必要がある。
- シャワーのようにたくさん言葉を浴びさせて、発話を強要しない。
- 理解可能な言語インプットを大量に与えることで、言語能力の習得を目指す。(自然に身につける)
- コミュニケーション能力の向上が目標。
ナチュラル・メソッドとは別もの。
クラッシェンの5つの仮設(モニターモデル・インプット仮説)
子どもの言語習得研究から生まれたモニター・モデル。初級向き。
インプット仮設とも言い、アウトプットを軽視。
- 習得・学習仮設:習得と学習は別物。習得は自然に身につく、学習は意識的に学習。学習によって得られた知識は、習得された知識には転化(変化)しない「ノン・インターフェイス」。学習・習得仮設。
- 自然習得順序仮設:目標言語は一定の順序で習得される。肯定文と否定文は肯定文を先に習得する。習得の順序は自然に決まっていて、個人的要因や教える順番に左右されない。
- モニター仮設:学習した知識は発話の際にチェック・修正される。学習した知識は発話をモニター(観察・チェック)する役にしか立たない。
- インプット仮説:「i+1」。iは現時点での言語能力で「+1」はそのレベルから少し高いレベルのこと。未習でも推測できたりすること。学習者は、現在の言語知識レベルよりわずかに高いレベル「i+1」を理解することで最も習得が進む。
- 情意フィルター仮設(じょうい):不安がない状態は言語習得を促進するが、不安があると習得を妨げる。不安要素を取り除く。学習の過程は緊張や不安を少なくし自然習得環境に近づけるほとよい。
1990年代:タスク中心の教授法(TBLT) – FonF
インタラクション重視(意味交渉)のFonF
タスク中心の教授法:TBLT(Task Based Language Teaching) 。
ロングのFonF。
FonF=フォーカス・オン・フォーム
課題(タスク)を与える課題シラバス。「例:旅先で写真を撮る」→文型に気付く→CanDo(JF日本語教育スタンダード)につながる。
オーディオ・リンガル・メソッド(FonFs)とコミュニカティブ・アプローチ(FonM)を合わせて2で割ったもの。
意味のある伝達活動をさせながら、必要に応じて言語形式も意識させる。
1つのタスクを達成するために意味交渉(やりとり)が必要な状況を作って、さらに文法も覚える教授法。
意味交渉をすることが理解可能なインプットにつながる。
中上級の聴解活動ディクトグロスもFonFの活動。
文法にも焦点を当てるためフィードバックが必要となる。ただし、明示的フィードバックは行わない。→気づかせる
例:グループで無人島生活の必需品リストを作成し、優先順位をつけさせる。
「窓を開けてください」などの指示を出して動作をさせるような単純な指示ではない。
1990年代:CLIL – FonF
CLIL:内容言語統合型学習(クリル)。1990年代に生まれたFonFの教授法。
社会や理科などの教科と外国語を組み合わせた学習。すぐに教師が支援する。
第二言語(学習言語)で学ぶ。4つのC「Content(内容)」「Cognition(思考)」「Communication(言語能力)」「Community(協同学習)/Culture(異文化理解)」。
基本的には学習言語を使用するが、媒介語を使って支援してもいい。
ヒューマニスティックな教授法
- サイレント・ウェイ:心理学者ガッテーニョが開発。教師は発話せず「ロッド」「カラーチャート」で指示を与える。気づかせる。
- コミュニティ・ランゲージ・ラーニング(CLL):心理学者カラン。授業の始めに学習者がテーマを決め、輪になって好きなことを学習言語で話し録音して振り返る。後行シラバスになる。
- TPR法(全身反応教授法):心理学者アッシャーが提唱。教師の指示に動作で答える。子ども向け「例:赤あげて、白あげて」。「てください」の練習で「窓をあけてください」。
- サジェストペディア:精神科医ロザノフの暗示学。壁の色・じゅうたん
・観葉植物・照明でリラックスさせる。クラシック音楽をかけて朗読させる。 - VT法:聴覚だけでなく視覚・触覚を活用。「学校へ行かない?」の文末イントネーションの練習で手を使う。
指導法
書く技能の指導(産出)
初級レベル
以下の2つが使われる。
- 制限作文アプローチ:1950年代。特定の言語を使って作文を作る。作文の内容・書くことよりも言語知識を習得するため。
口頭練習で形成された習慣を強化するオーディオ・リンガル・メソッド(1950年代)で使われた。AL法 - ガイデッド・ライティング:教師が与えた質問に対する答えを書き、それをつなぎ合わせて文章を仕上げる。
中上級レベル
中上級/文章表現の教室活動 参照。
- レトリック・アプローチ:1960〜70年代。
文章構造のパターンを提示して作文を書かせる。 - プロセス・アプローチ:1980年代。
推敲(すいこう)を繰返し文章を完成させる。 - ピア・レスポンス:1990年代後半。
作文を交換し、学習者同士でフィードバックを行う協働的な活動。