11〜13.日本語教育実践

【日本語教師養成講座】13.日本語教育実践3(技能別指導) :④中上級の授業|口頭表現(口頭表現のポイント/ロールプレイ/ディスカッション/ディベート/ストーリーテリング/ショーアンドテル/口頭表現授業の流れ/タスク先行型の会話指導法)

13.日本語教育実践3(技能別指導)/④中上級の授業|口頭表現

日本語教育実践(技能別指導)「中上級の口頭表現のポイント」「ロールプレイ」「ディスカッション」「ディベート」「ストーリーテリング」「ショーアンドテル」「口頭表現授業の流れ」「授業の注意点」「タスク先行型の会話指導法」などについてのまとめです。

中上級の口頭表現のポイント

  • 流暢さを養成するために使用するトピックや語彙表現・課題がやさしいもので、学習者が楽しめる活動内容にすること。
  • 初級は「正確さ」が重視されるが、中上級クラスでは流暢さが重視される。間違っていても途中で止めずに最後まで聞く。

主な口頭表現活動

対話

  1. ロールプレイ:それぞれに役割を与えて、その役になりきる。情報差(インフォメーションギャップ)がある。言葉選び(チョイス)が自由。

    タスク先行型のロールプレイ:ロールカード配布→すぐに会話。
    タスク後行型のロールプレイ:ロールカード配布→使って欲しい言葉を教える→ロールカードを見せ合って会話を組み立てる(負担軽減)。
  2. ディスカッション:ある事柄についてグループ内で自由に意見を言い合う。
    話し合いのルール:意見と発話者の人格を結び付けない。
    テーマ:冷静な話し合いができなくなるので個人的な事情があるテーマは避ける。
    観察者は討論者の発言だけでなく、非言語的要素も観察する(発言者の気持ちが分かる)。

    パネルディスカッション:公開して協力的な議論を行う(政治家・教育いろんな方面からくる)、平和的。
  3. ディベート:2つのグループ(賛成派・反対派)を作り、討論する。自分の意見を有利に運ぶ。
    話し合いのルール:話す順序・発話の時間配分を決めておく。賛成・反対の立場を明確にする。質問の答えを準備しておく。

独話

  1. スピーチ:自分の考えや気持ちを他人の前で話す。原稿作成は一人でも可能。
  2. 発表:自分の考えを述べたり、成果物(作文・絵)を口頭で共有する。
  3. プレゼンテーション:あるトピックについて情報を提示する。
  4. ストーリーテリング:物語化して語る。食洗機を売る時に子供が多い家庭の話をする。初級の導入向け。
  5. ショーアンドテル:写真や絵を見せて語る。

口頭表現の流れ(ロールプレイの場合)

前作業

本作業で扱うトピックに関して、スキーマの活性化(背景知識の活性化)。
キーワード確認。

本作業

パターン1

より上級クラス向き。

  1. ロールカードを配布:説明してやることを理解させる。
  2. 会話シートを配布:各グループで会話を作成。教師は机間巡視する。間違いがあれば修正。
  3. ロールプレイ:1組ずつ前に出てさせる。教師は必ずどんなところがよかったかフィードバックを行う。
    言語能力の限界に気づかせる。
  4. モデル会話を聴く:教師が読むのではなく読ませる。穴埋めにしてもいい。
  5. 語彙表現の確認:料理のトピックだと「混ぜる」「焼く」など。このタイミングではなくロールカード配布後にすることもある。

パターン2

文の作成が苦手な学習者向き。

  1. 語彙表現の確認。
  2. ロールカードを配布:説明してやることを理解させる。
  3. モデル会話で一度練習。
  4. 会話シートを配布:各グループで会話を作成。
  5. ロールプレイ:1組ずつ前に出てさせる。

後作業

本作業のトピックをや語彙表現を広げた活動。別のロールカードを渡して即興でさせてもいい。

授業の注意点

  • 場面設定は機能を明確にして、状況設定を明確に短くまとめる。
  • 発表時は、会話シートをなるべく読ませない。
  • 会話の途中で間違いを積極的に注意しない。リキャスト(暗示的フィードバック)を心がけてさりげなく訂正。
    ミステイク:修正がしやすい
    エラー:修正が難しい
  • プレゼンテーション後の質疑応答のとき、スライドの画面は消さない方がいい。
  • スライド:アニメーションや効果音の多用はダメ。

モデル会話を使った会話活動

スクリプト:日常生活で起こる典型的な順序や流れを考慮する。
トップダウンモデル:最初にモデル会話の映像を見せて状況を把握させる。
ボトムアップモデル:語彙・文型導入・発音練習を最初にする。

タスク先行型の会話指導法

事前に文型・語彙の導入は行わずに、試行錯誤しながらとにかく先にロールプレイ(タスク)をやってもらう。
・でも、準備する時間は与える。
・既習の語と表現だけタスクが遂行できるトピックにはしない。
・Yes/No疑問文よりもWH疑問文を設定する。→「できない」経験をなるべくさせる。
・ロールカードを読むのが負担になる場合は、母語で書いてもいい。→理解することが大事。
・タスク先行型(表現の練習より先にロールプレイ)にする目的:言語能力の限界に気づかせるため。「言いたいこと」「言えること」の違いに気づかせる。

ロールプレイ向きの内容

・新しく開発した筆記用具を置いてもらうために交渉する。→向かない(学習者にとって現実的でない)。
・大学で研修生として受け入れてもらえるよう交渉する。→向かない(一方的)。
・パーティーでスピーチをする。→向かない(一方的)。
・借りてたパソコンが壊れたので事情を説明して許してもらう。→ロールプレイに向いてる。実際あり得る話。真正性がある。

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