4.言語の構造

【日本語教師養成講座】4.言語の構造|2.言語学:②言語学の諸分野(類義語・同義語・対義語・多義語/類義表現/あいまいさ)

4.言語の構造|2.言語学:②言語学の諸分野(統語論・意味論・語用論)

言語の構造「類義語・同義語・対義語・多義語」「類義表現」「あいまいさ」などについてのまとめです。

類義語・同義語・対義語・多義語

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語と語の関係には、以下の4つがある。

  • 類義語:「きれいだ/美しい」。
  • 同義語:「きのう/さくじつ」。
  • 対義語:「表/裏」「入学/卒業」「行く/来る」「医者/患者」。反義語。
  • 多義語:「赤い花」「両手に花」。

類義語

部分的にはほぼ同じ意味を共通して持っているが、それぞれに異なる意味を持っている。

例:「きれいだ/美しい」「コップ/グラス」「降りる/落ちる」。

「きれいだ」と「美しい」

「きれいな花」と「美しい花」:両者にほとんど差がない。
「きれいな空気」と「美しい空気」:違和感がある。

同義語

指し示す対象の範囲がほとんど同じような同義的関係を持つ同士のこと。
全く同じ意味ということはなく、文体・スタイル・場面・文脈などで使い分けられる。

例:「きのう/さくじつ」。

対義語(反義語)

対義語は以下の4つがある。

  • 相補的対義語:AでなければB。一方が肯定されれば、他方が否定される関係。「男/女」「表/裏」「ある/ない」。
  • 両極的対義語:AとBの両語が両極的。「入学/卒業」。
  • 連続的対義語:AとBの両語が両極的ではあるが、中間的な段階を持つ。「高い/安い」。
  • 視点的対義語:AとBの両語が異なる視点から表現される。「行く/来る」。
    「医者:3時に来て下さい」「患者:3時に行きます」のように発話現場にいなければ意味が成立しないことをダイクシスという。
  • 相手の存在を前提としている対義語:「医者/患者」「親/子」。相手がいなければ成立しない。
    「社長/部下」は、社長は「上司」でもいいので、ごれに該当しない。

語種が異なる対義語

語種:和語・漢語・外来語・混合語。
普通の対義語は語種が同じだけど、例外がある。

例:「頂上/麓(ふもと)」。「頂上」は漢語・「麓」は和語。

品詞が異なる対義語

「違う(動詞)/同じ(形容動詞:ナ形容詞)」→異なる
「間に合う(動詞)/遅れる(動詞)」
「嫌い(形容動詞:ナ形容詞)/好き(形容動詞:ナ形容詞)」
「若い(形容詞:イ形容詞)/老ける(動詞)」→異なる

多義語

「花」にはたくさんの意味がある。

・「赤い花」:植物
・「お花見に行く」:桜
・「両手に花」:よいもの
・「高嶺の花」:見えてはいるが手の届かないもの
・「長年の苦労がやっと花開いた」

類義表現

文レベルの類義関係。類義文型。

「〜くせに」と「〜のに」

「(従属節)お兄ちゃんのくせに、(主節)横取りするの?」
「(従属節)お兄ちゃんなのに、(主節)横取りするの?」

・主語は主節も従属節も「お兄ちゃん」。
・従属節に状況判断「はずだ」を付ける。→「お兄ちゃんのはずなのに」は言わない。
・ナ形容詞・名詞が付くときは「な」が付く。→「ケチくせに」は言うが、「お兄ちゃんくせに」は言わない。
・問いかけの文は主節(後半)に「の?」が必要。

「〜反面」と「〜一方で」

「(従属節)兄は勉強ができる反面、(主節)運動が苦手だ」
「(従属節)兄は勉強ができる一方、(主節)運動が苦手だ」

・「反面」は対照的(対比)。
・「一方」も対照的(対比)だが同様の事柄(並行・累加)もある。並行「兄は勉強ができる一方、運動も得意だ」。

あいまいさ

言語表現「あいまいさ」には、漠然性と曖昧性がある。

漠然性:「足を怪我した」→足のどの部分かが曖昧。「ちょっと」も量が曖昧。
曖昧性:語彙的曖昧性「10名ぐらい」と構造的曖昧性。

構造的曖昧性(文レベル)

例:「昨日大学で友だちが財布を落としたという話を聞いた」
→「昨日」「大学で」が友だちの話か自分のことかわからない。

両義⽂という。

情報不足によるあいまいさ

言語情報が不足しているために、解釈が曖昧になる。

・例「山田さんもカラオケに誘う?」→「いいよ」。
→誘っていいのか、誘わなくていいのかわからない。

・例「(突然)私には妹がいます」。
→命題は解釈可能(妹がいる)だが、発話者の意図が分からない。

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